2023.08.13 13:44上間陽子/海をあげる本屋さんでちょっと読んで、図書館で長い間行列して、回ってきたら1〜2日で読んでしまった。様々な論理と、感情と、生き方。おばあさんや若者。そして幼児の可愛らしい質問とアイデア。主題は沖縄に生きるということについてかな。そのなかなかまとめることが難しい話が、心に沁みる口調で語られている。私は沖縄に行ったことはないけど、いつも沖縄のことを思う時に、「おばあちゃんが沖縄は物見遊山で行くところではないと言った」というのを思い出す。そのおばあちゃんが私の知り合いの人のおばあちゃんだったか、テレビで誰かが言ったのか、全く覚えていない。それともドラマか映画の中のおばあちゃんのセリフだったのかも。この言葉に共感するとともに、また物見遊山や基地を日々の糧にしている人々のこ...
2023.07.01 02:47柔らかい針のような雨今日のような雨、ほっそりとしてサワサワとした音の雨が降ると、針のような雨、柔らかい針の雨と思う。そのイメージは自分のオリジナルではないのはわかっていたけど、その原典が何なのか、たぶん文学じゃないかとは思ったけれど、全く思い出せていなかったし、思い出そうともしなかった。それほど私の中にすでにずっと住っているものとも言える。それを今更探す必要もないと思いつつ、インターネットでこれほど簡単に見つかることに罪悪感も抱きつつ、見つけました。くれなゐの二尺伸びたる薔薇の芽の針やはらかに春雨のふる 正岡子規あまりにも美しいその歌は、どこでいつ知ったかなどということも固有名詞も忘れ去られてなお、そのエッセンスだけが私の中に残っていたのだということに感動しました。本当に...
2021.10.03 13:48村上春樹 / 一人称単数久しぶりに村上春樹を読んだ。8つの短編集。過去の記憶についての。といってよいか。途中でこれは小説じゃなくて、村上春樹自身の話、つまり随筆かなとも思った。でもまあ、どちらでもよい。同じようなテーマを8つのヴァリエーションで書き起こすことができるその実力はすごいと思った。8つともが似通っていない作品になっている。しかも全部ちゃんと村上春樹の印がついている。前に読んでいた彼の作品より、内容的に奥行きができたように思う。年齢的にも私よりも少し先を行かれていることで余計に、歳をとるということはそういうことなのだと教えてもらっている感じがした。実はこの本を読み始めた夜に、同じ高校で時を共に過ごした大切な友人が亡くなったという知らせを受け取った。そんな深刻な病気を持...
2021.04.28 03:42三好達治 / 郷愁ご存じの方も多いと思いますが、フランス語でla mère(母)と、la mer(海)は同じ音なので、よくこの2つの言葉が相互的なイメージ喚起に使われるようです。そして、このことが話題になるたびに、私は、高校の時、男の子たちが男声合唱(多田武彦)で歌っていた歌詞を思い出します。***郷愁 蝶のやうな私の郷愁!……。蝶はいくつか籬(まがき)を越え、午後の街角(まちかど)に海を見る……。私は壁に海を聴く……。私は本を閉ぢる。私は壁に凭れる。隣りの部屋で二時が打つ。「海、遠い海よ! と私は紙にしたためる。――海よ、僕らの使ふ文字では、お前の中に母がゐる。そして母よ、仏蘭西人の言葉では、あなたの中に海がある。」***堀口大学の詩だと思っていましたが、今調べたら、...
2021.02.16 12:26椎茸の山かけ父の田舎が大分で、良い干ししいたけをたくさん親戚が送ってくれるので、それで満足していてあまり生しいたけを買ったりしなかったのですが、そう言えばそんなのがあったなと思って思い出して、作ったのがこの椎茸の山かけ。美味しくて、最近、しょっちゅうこれを作っています。おかずにボリュームが少ない時にこれを食べると大満足になります。
2020.08.21 06:11世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」/ 山口 周この題名からすでに想像できる感じの内容なので、「そうなのかー!!」というような驚きは特にありませんが、読みながらいろいろと考えて面白かったです。経営の意思決定が、「アート」(美意識、直観)、「サイエンス」(体系的な分析、評価)と「クラフト」(過去の経験や知識)の3つの要素からなされる。この場合、「サイエンス」と「クラフト」についてはきちんと説明することができるけれど、「アート」については説明ができない。そこで、議論を戦わせる場合や説明責任を負う時に「アート」はすごく弱くなってしまう。けれど、論理的に納得ができる「サイエンス」と「クラフト」のみに頼ってしまうと、結局、現状にスピードとコスト削減を加える苦しい戦いになるだけで、差別化もできず、経営の飛躍は望...
2020.07.24 06:13ランスへの帰郷 Retour à Reimsこの美しい表紙の本を初めて手にしたのは、例の隣の駅の近くの小さな本屋さんでした。「売れてほしい本のコーナー」(以前に書きましたが、この本屋さんではミシェル・フーコーの著作など一般的には到底売れそうにない本がこのコーナーに並んでいます)のさらに、本の表紙をこちら向きに縦における木製のラックがあって、そこにありました。題名に何となく覚えがあった(それはこのノスタルジックな白黒写真のせいで起こった私の勘違いなのか、それとも新刊なのでどこかの書評で知っていたのか不明)気もして、みすず書房の装丁はすっきりしていて好きだけど、これはその中でも美しく感じられ、手に取ったのです。著者のディディエ・エリボンという人は全く知りませんでしたが、フーコーなどのフランス思想家の...
2020.05.28 12:14ESCARGOTIQUE<7日間ブックカバーチャレンジ>最初にブックカバーチャレンジと聞いたときに、本の表紙に関する何かイヴェントだと思いました。実際には、本の紹介にブックカバーだけアップしてね、という意味ですね。このルールを大々的に破ってしまっているわけですが、5回目になる今回は「ブックカバー」をキーワードとしての投稿をさせていただこうかと思います。同人誌って今でもあるのでしょうか。私の学生時代にすでに「昔、そういう物があった」という感じで、過去のものという色合いが強かったと思います。私は文学少女でもなかったので、そういうものに関わることもなさそうだったのですが、卒業して社会人になって大学の同級生と集まったりしていたら、同人誌をやることになったのです。内容は、自由。いろいろ...
2020.05.25 15:21モオツァルト・無常という事 / 小林秀雄<7日間ブックカバーチャレンジ>どんどん奥のほうまで行きます。やはりこの本は挙げないとと感じます。と思って、本棚を探したのですがあるはずなのにない。他の文庫本たちがいるところにいないのは、いつか抜き出したからなのか? その記憶もありませんで、インターネットに載っているかと思いましたが、かろうじて「無常という事」を音読したものがあって、何とか再会を果たしたのですが、やはりもう一度読みたくて、図書館も閉まっているし、やはりこれからの人生にも必要と思い、購入することにしました。インターネットで注文すると1週間くらいかかりそう、電子書籍という気はせず、近所の本屋さんに行ってみました。本屋さんで本を探すこと自体が、すごく久しぶりでした。最寄り駅の本屋さんには著者...