2019.05.23 09:30Ji Won Song(韓国)Finalシベリウスのコンチェルト。 ヴァイオリンのことはよくわからないけれど出場者の中でもかなり技術的にも素晴らしくスピード感のある演奏(速いテンポで弾けるとかそういうことではなくて、描き方に迷いが感じられないというか、線がふらつかないという感じ)で、そしてすごい集中力なのだけど、決して押してこられるイメージはない。第1楽章の気持ちのよいメロディーのところまで持っていく長いフレーズの後の到達感とか、第2楽章の抑制の効いた進め方など、素晴らしい。知的な演奏だと思った。低い音が特に魅力的で力強く深く響くような気がする。第3楽章の演奏中に入る雑音がまた気持ちよい。オーケストラの音とヴァイオリンの軽くリズミカルな調子との対比も心地よい。 ドレスも広がったお姫...
2019.05.22 13:00Luke Hsu - USAエリザベート王妃コンクールーファイナル 5/20から始まっていました。最初の演奏はUSAのLuke Hsuさん。 この人好きです。弾き方が好きというか、言いたいことがよくわかるというか、その気にさせてくれる演奏がいいです。若さいっぱいとかそういうのでもなく、そんなに素敵な外見でもないけど、弾いている姿を見ていると、ぐんぐん引き込まれる。細かいことよりも、すとんとああこうありたいと思うような気持ちになるのです。まず人としてとても魅力的なヴァイオリニストだと思います。
2019.05.10 01:44Siwoo Kim USA―韓国Semi-Final Récital朝起きて朝ごはんの支度をするときにイザイの無伴奏が部屋の中に響く日が続いている気がします。 多くの出場者が課題曲のBram Van Camp新曲を先頭に持ってきて、そうじゃないかもしれないけど「先に済ます」感があるなかで、彼のプログラムは、ドビュッシーのソナタから始まって、イザイ、Bram Van Camp、そしてラヴェルのツィガーヌという曲順で、Van Campoとイザイがプログラムの中でとてもうまくなじんでいる。 最後のツィガーヌが始まっていた時、そのプログラムングを考えたこと自体に、まさしく演奏家としてリサイタルという一つの作品を提示する意志が現れていて、彼は素敵なヴァイオリニストなのではな...
2019.05.09 07:10吉江 美桜Semi-Final Concerto 吉江 美桜さん。 始まりの音に「え?」って思った。この「え?」っていうのは魅力ある演奏家として私にとってけっこう大切な気がした。 モーツァルトだから何か軽く気軽な感じで入ってくると予想していたところに、密度としてブラームスというか、ブラームスほどの大きさというか深さはなくてもっと小ぶりなのだけどきっちり密度がある音でキューンと入ってきて、その後も一貫してその丁寧できちんとした音で次々語っていくやり方が非常にチャーミングなヴァイオリンだった。ふんわり広がりのある音楽というより、小箱の中にきちんと並んだ小さな宝物の数々を見せてもらい、その箱に顔を近づけて覗き込んで「うわっ。」って目を輝かせながら...
2019.05.08 01:25宇野由樹子Semi-Final Récital宇野由樹子さん、好きです。 ほっそり軽やかでふんわりと包み込み、でも遠くまで良く通る音はよく語ります。 たくさんあった第1次予選の録音で、誰か日本人の演奏聴いてみようと思って聴いてみて出会いました。え、こんな人がいるのだと驚きとともに聴き入りました。「ほっそりとした音だけど、押しつけがましくなく繊細で説得力のある音。音程が気持ちよい。」とメモしています。 セミファイナルは、課題の新曲、イザイとベートーヴェンのソナタ3番。朝ごはんの支度をしながら聴いていたのですが、気持ちよい空気で包んであっという間に終わってしまいました。
2019.05.06 06:35Timothy Chooi カナダ1st round佐藤卓史さんとのピアノでスタートしたプログラム最初のベートーヴェン、その躍動感語り口にすっかり耳が吸い寄せられました。音の張り、響きが、音のスピード感が気持ちよい。佐藤さんのピアノがやっぱりすごくよい。時にそこまでやるかというような遊び心の入ったスフォルツァンドが楽しさを増す。そして無伴奏のバッハ、伸ばした音が語る孤独感、心の底の底の方にある沈黙の空気を音にしたバッハにしかない音楽の在り方を思い起こしてくれる演奏だ。そしてパガニーニの明るいエッジの効いた音がまた素晴らしい。 スリリングでありながら、言いたいことの安定感はがっちりあるのがいいなと思いました。 Ludwig van Beethoven : Allegro as...
2019.05.06 06:30エリザベート王妃コンクール 2019 ヴァイオリン音楽で競争していることにはまったく興味が無いのですが、コンクールの演奏を聴くのが楽しいと思うのは、ある曲のいろいろな演奏を味わえることです。 様々な演奏家のCDはたくさん出ているし、それらを聴くことは特に最近とても簡単にできるようになっているのですが、演奏場所や録音状態(録音後のお化粧も含めて)による違いによる音の違いがかなりある。コンクールのライブ録音は、会場も録音状態もほぼ同じところでの演奏なので、それぞれの人たちの持っている音や解釈の違いがクリアにこちらに聞こえてきて、かなり演奏自体の違いがわかってそこが楽しいと思うのです。 そしてもちろん、ほとんど世の中でのいろいろな評判の情報が無いこと、その時に自身を出し尽くそうとする真摯な演奏...