ご存じの方も多いと思いますが、フランス語でla mère(母)と、la mer(海)は同じ音なので、よくこの2つの言葉が相互的なイメージ喚起に使われるようです。
そして、このことが話題になるたびに、私は、高校の時、男の子たちが男声合唱(多田武彦)で歌っていた歌詞を思い出します。
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郷愁
蝶のやうな私の郷愁!……。蝶はいくつか籬(まがき)を越え、午後の街角(まちかど)に海を見る……。私は壁に海を聴く……。私は本を閉ぢる。私は壁に凭れる。隣りの部屋で二時が打つ。「海、遠い海よ! と私は紙にしたためる。――海よ、僕らの使ふ文字では、お前の中に母がゐる。そして母よ、仏蘭西人の言葉では、あなたの中に海がある。」
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堀口大学の詩だと思っていましたが、今調べたら、三好達治でした。
全文、そう、こんなだったか。
いい詩だな。
なぜか「隣りの部屋で二時が打つ。」で涙がこみ上げてきます。
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