はじまりの場所


来ても仕方ないと思っても、来てしまうところ。

来ても仕方ないと思うのはそこは始まった場所で、これから行く場所ではないということはわかっているから。

そして来ても仕方がないのは、私が見たいものはもうほとんどないから。

ほとんど何も残っていないし、ほとんど誰もいないところに来て、ほんの少し残っているかけらを見つめている。

目には見えないもののことを思っている。失われたもののことを。

それはあまり健康的なことではない。

もうやめようと思う。

でも来たいのなら無理せずに来てもいいじゃないかとも思う。

そうやって、もうそれは自分の中にしか存在しないのだということをちゃんと理解すればいいのだと思う。

戦争が無くても、ダムの底に沈まなくても、大災害が来なくても、こんなに平和的に故郷は無くなってしまうのだとは思っていなかった。

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